剣を手に入れた若者がいた ~モンスターボールがヒスイ世界を破壊する説~

モンスターボールやヒスイ文化に関してこれまで行った考察の要点レジェンズアルセウス(以下新作)発売前にまとめておこうのコーナーです。

要約すると、
「最初のモンスターボール」はギンガ団が持ち込んだものであり、モンスターボールによって登場する「ポケモントレーナー」はそれ以前にヒスイその他の世界に存在したポケモン使い達よりも圧倒的に強く、社会の新たな中心にすらなるが、それ故にヒスイ世界に存在した文化は廃れていき今日の世界へと変わっていき、またヒスイギンガ団もその研究成果もヒスイ地方を出る事なく終わる。
と言った感じの話です。

モンスターボールとヒスイ文化

新作において、主人公は我々が知るものとは違うモンスターボールを使い、ポケモンを捕獲する事ができます。
このボールは最初ギンガ団から与えられるもので、本来ヒスイ地方にはなかったものです。

故にヒスイの人々からは異質なものとして認識されています。
このことからはつまり、当時のヒスイ地方に生きる人々及びその文化はモンスターボールを持っておらず、その恩恵も受けたことが無いという事を読み取れます。
敢えて述べるまでも無い事ですが、現代モンスターボールが存在する事による人間への恩恵は計り知れません。
単純にポケモンと対峙した時、ボールを投げる事で捕獲という形で制圧するか、それはできないまでも時間を稼ぐことができますから安全を得られます。
また捕獲したポケモンは、とりあえずトレーナーを攻撃する事はなくなり*1、力量にもよりますがひとまずこちらの願いを聞いてくれます。
さらにあるポケモンが味方になった後においても、そのポケモンを収納し携帯できるため環境を合わせたり大所帯になる事を勘案する必要無しに共に過ごし、旅ができますし、多くのポケモンでパーティを組む事すらできます。
パーティを組んでいる場合、相性で不利となる相手に対して別のポケモンで対抗したり、ポケモンが危険となった時に無理させず素早く収納して保護したり、あるいは数の暴力で格上となる相手ポケモンに対抗したりという事が可能になります。
こうした事は全てモンスターボールの恩恵と言えるでしょう。

逆を言えば、モンスターボールを持たないヒスイの人々は恐らくこうした事がほとんどできません。
野生ポケモンと対峙した際ボールで時間を稼いで離脱するという事は当然できないので味方となるポケモンが事前に存在しない限り詰みですし、その味方となるポケモンもボールによって得る事は出来ないのです。

キャプテンであるヨネは「ゴンベは兄弟同然に育ったからアンタらのようにおかしなボールで捕らえずとも一緒に戦ってくれる」と述べていますが、
これはつまり、彼女にとってモンスターボールによる捕獲は違和感があり、兄弟同然に育って信頼を育む事こそが彼女にとって自然な、伝統的なポケモンとの接し方であるという事ですね。
「兄弟同然に育って」得られるポケモンが一匹のゴンベ。
これは現代基準で考えるとポケモンを手持ちにする手間として明らかに釣り合っていません。
クイックボールで有利タイプのポケモン捕まえてジムに挑むぜ!みたいなノリの時に「5年かけて言う事聞いてもらえる信頼結ばないと実戦投入できません」とかなったらやってられないでしょ。
でも彼らはそうしないとポケモンに言う事を聞いてもらえない。
お手軽に気に入ったポケモンを手持ちにするなんてことはできない。
また当然ポケモンを収納できないのでサイドンを連れて閉所を冒険するなんてことは難しいでしょう。
サイドンカメックスリザードンと…なんてゾロゾロ連れてたら邪魔でしょうがないのでパーティを組んで冒険する事も恐らくほぼ不可能です。
となるとサイドン連れてる時にラフレシアに襲われたからリザードンに交代…みたいな事も多分できないのでそれだけ野生ポケモンと対峙する(対峙する可能性のある行動をとる)危険も大きくなります。
…正直言って最初に貰った御三家単騎で攻略しなければならないとなったら大体のポケモン作品はなかなかクリアできないでしょう。
チコリータ単騎でジョウト地方を制するのはかなりの苦行ですし、ミズゴロウ単騎では橋の下で一生ジュプトルの餌食です。
強力なチャンピオンとして知られるシロナやダンデも手持ちがガブリアス一匹とかリザードン一匹なら大して強くないはず。
それぐらいパーティを組めないという事は深刻だし、「ポケモン的ではない」のです。
しかし恐らく彼らは(我々から見ると)そう言う縛りを背負っているに近く、要するにヒスイ時代の「ポケモン使い」はモンスターボールを持つ者、つまり「ポケモントレーナー」と比べて圧倒的に弱いんですね。
逆を言えばポケモントレーナー」は「モンスターボール以前」のポケモン使い達と比べて圧倒的に強く、異常な存在という事にもなります。
またモンスターボールはそうした「ポケモントレーナー」を生み出してしまうきっかけでもある。

自然と人間とモンスターボールポケモンリーグ

ヒスイではポケモンは人間からは遠い、恐ろしい存在であり、公式においても「人とポケモンは共に生きる道をまだ知らない」と語られています。*2
特にキング・クイーンと呼ばれる強力な一部の個体に関しては当時の土着の大勢力であるシンジュ団もコンゴウ団も「崇め奉り恩恵を賜る」という形で一致しており、また作中で起こる暴走事件の際それを御する事はできない(または困難)という事が示されていました。

これは強いポケモンとは勝つことのできない自然であり、だから付き合い方を考えうまくやっていく必要があるという事ではないでしょうか?
シンジュ団やコンゴウ団のキャプテンとは自然との調停を仕事とする人々なのではないでしょうか?

しかしキャプテンのキクイでも対処できなかったバサギリ事件をギンガ団のガキンチョは処理できてしまいます。
言ってしまえば外様でも技術力を持つギンガ団の方が伝統的なシンジュ・コンゴウ団よりも土地の問題に対する対応力が高かった。

言葉の配置される個所はやや異なりますが「キング」「キャプテン」と言ったワードは似たような社会構造のアローラでも出てきており、他方他の土地ではでてきません。(アローラで畏れられながら敬われているのはカプであり、キング・クイーンの枠にあたるぬしではありませんでしたが)
アローラは世界の潮流から取り残されている途上地方であり、またポケモンリーグや四天王と言った仕組みとキャプテンキング制は食い合うといったことが言われていましたから、
「キャプテン」が登場するような社会制度はどこの地方でも見られる比較的原始的な仕組みであり、ポケモンリーグが盛り上がっていく過程で消えていくものなのではないかと想像できます。
つまりアローラのような田舎を除いて、近年全世界的にキャプテン制は破壊されてきたのではないでしょうか。
少なくともシンオウ地方にキャプテン制は残っていません。またポケモン全般を恐れたりどうにかうまくやって行こうと苦心している様子も見られません。

では、キャプテン制が衰退するとはどういう事でしょうか。
ある地方の制度をお取り潰しをできるような超地方的な上位組織はありませんし、制度を維持できないような破局が起こったのであれば現代のシンオウその他の地方にはつながらないでしょうから、不要化し廃れたというのが一番あるところかなと思います。
キャプテン制が不要化して廃れるという事は、(ポケモンがいなくなって調停行為そのものが不要化したのでもない限り)別のより人間にとって都合のいい仕組みが登場したという事になるのでしょう。

モンスターボールによって生み出されるポケモントレーナーがそれまでのポケモン使い達よりも強いなら。
キャプテンですら制御できないような暴走状態のキングを抑え、あるいは倒すようなことができてしまうなら。
モンスターボール以後」の世界においてポケモン達はもはや「倒す事の出来ない自然」ではなくなります。

強力なポケモンと言えど力で排除できるならいちいちお伺いを立ててうまくやっていく必要などない。
お互いの利益のためにポケモンの生息域を守る必要もないし、自然など思うまま切り開いてしまえばいい。
そうなったなら、調停役なんて要りませんよね。
必要なのは、社会が求めるのは、自然を制し人間の世界を広げる事ができる「強いポケモントレーナーです。

現代、世界には多くの街が存在しています。
それらは町と言いつつもそれぞれが都市国家的であり、大体にポケモンジムがあり、ポケモンジムは地方ごとのポケモンリーグによって統べられています。
ナツメが空手大王を倒しヤマブキジムのリーダーとなった(ヤマブキジムをエスパージムとした)事からわかる通り、ジムリーダーに求められる資質とはまず強さです。
またジムと名が付くだけあってポケモンジムではジムリーダーの下トレーナーたちは技量を高める訓練を行っている様子が見られます。
つまりポケモンジムやポケモンリーグとは*3、基本的には強いポケモントレーナーを育成するための仕組みなのではないでしょうか。
これは現在でも社会が強いポケモントレーナーを求めているという事と、過去の人々が強いポケモントレーナーを育成するためにリーグを興したという事を意味します。
過去においては自然を切り開く事でまた人間の世界をポケモンから守るために、現在でも自然以外に悪しきポケモントレーナーからも社会を守るために、強いポケモントレーナーは必要なのです。
チャンピオンではワタルはチョウジタウンでロケット団のアジトを壊滅させていましたし、ダンデは大量発生した暴走ダイマックスポケモンを抑え込んだりしたりしていました。
ジムリーダーでもビートがやはり単身で暴走ダイマックスポケモンを4匹鎮めており、イッシュのジムリーダー達はテロ組織であるプラズマ団の幹部七賢者に対抗していました。
現代においてはむしろ過去よりも「強いトレーナー」は必要であり、ポケモンリーグは治安維持装置的ですらあります。ゲーチスは逆にNを使ってポケモンリーグを落とす事でイッシュを征服できるとすら考えていました)
現代世界*4の根幹にポケモンリーグがあるのです。キャプテン制ではなく。
すなわちモンスターボールポケモントレーナー、そしてそれを統べるポケモンリーグの登場によって、キャプテン制は淘汰されていった*5のではないでしょうか。

これは陰謀論ツリー



モンスターボールの歴史とヒスイギンガ団の終焉

さて、これまで知られていた*6モンスターボール誕生の歴史とは、辻褄をあわせる限り、1925年(=約100年前)のニシノモリ教授の実験ミスをきっかけとしてカントー近辺で開発が始まり、オーキドの幼少期(概ね1950年前後)シルフカンパニーの製品として市販されるようになり、シャガが成人したころイッシュに伝わった…というものだと考えられます。


 
(細かな年代こそ現在では扱われなくなりましたが、「ニシノモリ教授」の設定は現在でも生きているのでこの歴史で間違いないと思います。金銀において「モンスターボールが売られるまでは皆ぼんぐり使ってポケモンを捕まえてたのよ」という台詞がある事からそれ以前にもモンスターボールに類するものがあったと思われがちですが、実はぼんぐりボールに長い歴史があると示すような描写は無く、恐らくニシノモリ研究~シルフのモンスターボール開発の間の期間において発明され利用されていた雛形のようなものではないかなと

新作の舞台は描写などから現在よりも大体150年くらい前だとされていますから、これは単純には矛盾していますね。
わざわざニシノモリ教授の発見を元に開発せずとも、ヒスイのモンスターボールをベースに研究を進めればよかったはずです。
またヒスイ地方にやってきたギンガ団は世界をめぐる組織でその行動範囲にはイッシュも含まれ得ていますので、シャガの幼少期モンスターボールが存在しなかったというのもおかしい。
この矛盾を解消する答えは、「ヒスイ地方にやって来たギンガ団はそのままヒスイ地方を出る事は無く定着したが、その研究成果はほぼ誰にも知られず失われた」くらいしかないように思われます。

私はビリリダマ族を、いわゆる原種ビリリダマモンスターボールが作られた会社で見つかったモンスターボールによく似たポケモンであり、その体は自然にはあり得ない物質でできている」という図鑑説明から、
ヘドロが月からのX線ポケモンベトベターとなったように、モンスターボールが何らかの要因でポケモン化し生まれた種族だと考えています。

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ヒスイビリリダマも同様の生まれで、草複合なのはギンガ団のモンスターボールが木製だからではないかなと。

新作固有のリージョンフォームは、それよりも未来にあたるシンオウその他の地方では未確認であり、彼らは既に滅びた系統だと考えられます。
ヒスイビリリダマももちろんシンオウ地方には存在しません。シンオウ地方には原種のビリリダマが生息しています。*7

またそもそも原種ビリリダマには「初めて発見された」記録があり種族発生の歴史がほぼ明示されている以上、それ以前にビリリダマは(歴史上)存在してはならないのです。
ヒスイビリリダマがヒスイのモンスターボールポケモン化した姿であるなら、ヒスイビリリダマが滅びる時は元となるヒスイのモンスターボールが滅びた(作られなくなった)時でしょう。
この事からも、ヒスイのモンスターボールは途絶えていなくてはならないという事が言えます。

なお、新作においてモンスターボールはクラフトで作る事ができますがその場合ですら「不思議なボール」と記されており、主人公にとってもよくわからない物であるようですので、

恐らくこのボール自体は「仕組みはわからないけどとりあえずでこれでポケモンを収納できる」程度の存在であり、偶然の産物なのでしょう。

年表

以下は私の予想をまとめて作った年表です。
当たってるといいな(小並感)


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*1:ダークポケモンは除く

*2:なお「人とポケモンは共に生きる道をまだ知らない」は下の句である「現代、人はポケモンと共に生きている」を導く枕詞です

*3:ガラルのように興行化している例もありますが

*4:アローラなどのウルトラスーパー超ド田舎を除く

*5:またキャプテン制を前提とした社会構造は消えていった

*6:まあ大多数の人は知らなかったでしょうが

*7:218番道路限定ですが